少し前になるが2024年2月25日付けの朝日新聞に「半導体の王者ついに」と題して、TMSCの熊本工場開所式を取り上げたコラムが掲載された。TSMC(台湾積体電路製造)は世界中の半導体設計企業から生産を請け負う「受託製造」のビジネスモデルで世界シェアの60%近くを占めるアジア最大の企業である。
なぜ半導体の王者は熊本に製造拠点を作るのか? 理由はいくつかある。
- 半導体の製造には大量の水や電気が必要だが、狭い台湾では確保が難しい。熊本では電力、水も豊富にあり供給できる。
- 人口の少ない台湾では優秀な人材確保が難しくなりつつある。
- ソニーやデンソーの工場がある熊本では、ソニー、デンソーはTSMCの半導体を買ってくれる優良な顧客である。
- 現在の日本にはTSMCのように12ナノから28ナノメートルの回路を作れる技術はない。日本で製造拠点ができれば、納期短縮や製品のコスト低下になり日本の製造業にはメリット大きい。
- 半導体製造関連企業、例えば半導体用フォトレジストの東京応化、電子めっき薬品大手のJCU、レーザー露光装置のASML日本法人、半導体製造装工程の部品・材料メーカーであるフェローテックなど多数の関連企業が熊本に新規工場を稼働または稼働見込みである。こうした関連企業が集まり熊本地区で製造のエコシステムが構築される機運が高まっている。
次にソニーとの関係を見てみよう。「ソニーはTSMCの日本における最大の取引先である。」その理由はスマホ用カメラに採用されているソニーのイメージセンサである。積層型CMOSイメージセンサーは、画素が形成された画素チップと信号処理回路が形成されたロジックチップとを重ね合わせた積層構造をしている。このロジックチップをTSMCが製造している。つまりソニーのCMOSセンサーはTSMCのロジック半導体と組み合わせて、Apple社のiPhone用に桁違いの数量を出荷するようになっていたのである。これがTSMCが熊本に工場を建てる理由である。
またデンソーとの関係を見ると、TSMCが製造する車載用半導体をデンソーが購入するという構図がある。
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