表を見ていただきたい。2020年の世界の半導体メーカーの売り上げランキングである。
TOP10に入っているのは、キオクシア1社である。1980年代世界を席巻した日本の半導体企業が、この現状である。どうしてこうなってしまったのだろう? かつてNHKの番組で電子立国日本とまでいわれた半導体王国はどこへ行ってしまったのだろう? 疑問に思えてきたのでその理由を調べてみることにした。
元日立製作所の半導体技術者であり、現在は半導体ジャーナリストである湯之上隆氏の「日本『半導体』敗戦」とういう著書によれば、日本の半導体産業の凋落の原因は以下のようである。
1 過剰品質であったこと
2 社内において開発と製造が分業化されていたこと つまり開発チームが製造とその先の販売に目を向けることがなく性能のみを追求した結果、コスト競争力に劣った製品しか生まれなかった
3 日本の半導体の製造会社は電気メーカの一部門であり、経営者が必ずしも半導体に知見があるとは限らなかったこと、つまり半導体をビジネスとして舵取りする人間が素人であったこと
4 世界的な半導体需要の質の変化に追随できなかったこと つまり半導体を大量に必要とする製品が高性能を要求するメインフレームコンピュータから性能よりも価格が優先されるパソコンに移っていることに気が付かなかったこと
湯之上氏の指摘において1と2は、顧客ニーズを読み誤った製品設計だったことと言い換えることができる。つまり日本の半導体メーカは、技術至上主義に陥っており、技術さえよければ売れるはずだ、世界のどこかに買ってくれるお客がいるという思い込みで半導体を作っていた。それは高性能な半導体が求められたメインフレームコンピュータの時代の話であって、世の中が価格の安いパソコンが主流となっていた80年代後半からは、コストが顧客の一番の関心事であることに気が付かなかった。これは4の理由と一致している。3の半導体の知見がある者が、電気メーカーの経営者でなかったこと、これは日本にとって不幸なことだった。アメリカも韓国も台湾も半導体メーカの経営者は皆半導体の専門家、プロであった。日本の電気メーカの経営者は思い切った設備投資に踏み切れなかった。また、その設備投資が生存を左右する局面であっても、会社にとって半導体以外の事業、つまり主要部門の収支に目が行ってしまっていた。
こうして日本の半導体企業の内部事情をつぶさに見てゆくと、構造的な問題を抱えていたことが判り、凋落は必然であったと思えてくる。
さらに日米半導体協定といった不平等条約の締結を余儀なくされ、バブル崩壊という外的要因も重なった。また、政府の通商政策も税制面や産業育成政策の後押しもあまりなかった。というような幾多のマイナスの要因も重なった。
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